2006年12月7日木曜日

第5の波


IDW'06の招待講演で松下からテレビの将来技術を展望した話があったらしい。

松下は二つの将来像を示した。一つは,より高画質化を進める方向である。コンテンツはHD放送やBlu-rayディスクの画素数を大幅に上回る「スーパーHD」に進化し,ディスプレイは大画面化がさらに進むとともにフレキシブルになるとする。大画面・高精細化を進めて圧倒的な臨場感を実現する。なお,ディスプレイの重量や設置を考慮すると,「ディスプレイはフレキシブルに向かう」と言う。
Tech 0nより

ついに有機フレキシブルエレクトロニクスの出番か!? と思い、第5の波がいつ頃だと予想しているのか見てみると・・・・・・・2020年。

よし、まだ10年は研究するネタが尽きないぞ!

MN

2006年12月3日日曜日

早くなんとかしないと。。。。

・幼稚園以前の育児への公費支出が西欧諸国の数分の一
・国内総生産に対する公財政支出学校教育費が主要国中最低
・高等教育への公財政支出の対国内総生産比がOECD加盟国中最低レベル
・高等教育費の私費負担率がOECD加盟国中最高レベル
・国立大学の学費が世界最高レベル(多くの国ではタダ)

これどこの国のことだかわかりますか?
もちろん、我が国日本のことです。

国家や国旗を強要したり、教育委員会を弄くったりとかのカネのかからない小手先のことをやっているヒマがあるのなら、こちらを何とかしないといけないと思います。
家計の育児負担が少子化の大きな原因にもなっていることを認識すべきです。
お役人からは「支出削減のため教育への公費支出も一律カット」という発想しか出てきません。こういうのは政治が大鉈を振るわなければならないのですが、私立学校出身のボンボン二世議員が幅をきかせている今の与党には、何とかしようとう気配がまったくありません。

早くなんとかしないと、日本の将来を担う次世代が質・量ともに不足していって、この国の衰退は止められなくなってしまいます。

MN

2006年9月16日土曜日

薄膜材料デバイス研究会

2年前からMNもお手伝いしている薄膜材料デバイス研究会の第3回研究集会が、11月10日、11日に奈良で開催されます。
発表の締切は9/15と迫ってきていますので、指導教員と相談してどんどん申し込んでください。学生発表は、基本的にポスターになると思います。

発表締め切りが公式に22日(金)まで延長されました!当研究室のメンバーだけでなく、ここを覗きに来られたご同業の皆様も、ぜひご投稿下さい。

詳しくはこちらをご覧下さい。

当研究室の学生の皆さんは有機トランジスタしか触ったことがないはずです。無機の薄膜トランジスタでどのようなことが研究されているかを知ることはたいへん有益だと思います。
さらに今回は 菊池誠 大先生というスゴイ招待講演者がいます。
といっても、最近の学生なら知らない人も多いかもしれません。
略歴を拝見すると....
1925年、東京に生まれる。1948年東京大学理学部物理学科卒業。同年通産省電気試験所(現在の産業技術総合研究所)入所。以後、一貫してトランジスタ、半導体等エレクトロニクスの基礎研究を続け、半導体研究室長、菊池特別研究室長などを歴任。1960年から1961年まで、米国マサチューセッツ工科大学エレクトロニクス研究所に客員研究員として滞在。1974年ソニー株式会社中央研究所長、常務取締役、19891993年まで同社技術顧問を歴任。1990年東海大学工学部教授、2000年より現職。1982年米国IEEE『Fellow』に、1987年には米国ナショナル・アカデミー・オブ・エンジニアリングの外国会員に就任。1994年神奈川文化賞受賞。
『トランジスタ』(六月社)(1959年毎日出版文化賞)、『情報人間の時代』(実業の日本社)(1970年日本エッセイストクラブ賞),『幸運な失敗』(日本放送出版協会)(1972年サンケイ児童出版文化賞)、『三つ子の魂が目を覚ます』(NTT出版)など著書多数。

MNが院生のときに、特別講義を拝聴したことがあります。その時点で、すでに後光が差していました。今回、この研究会の発起人である鮫島先生との個人的な関係で、ご講演を引き受けていただけたそうです。

また、ディナー付きで学生事前申し込み(10/13までに入金)だと参加費4,000円という値段も魅力です。発表しない人も、勉強のために是非参加してください。

MN

2006年9月12日火曜日

PhilipsのLET!


またまたYouTubeですが、まずはこれをご覧下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=Yd99gyE4jCk

Philipsが発表した'Light Emitting Textiles'です。
こちらにやや詳しい発表記事があります。
http://www.research.philips.com/newscenter/archive/2006/060904-decosit.html
http://www.research.philips.com/newscenter/archive/2006/060901-lumalive.html
詳細は不明ですが、無機LEDのアレイを組み込んだもののようです。
いよいよ、フレキシブルエレクトロニクスの世界が現実として見え始めたというところでしょうか。
MNも常々言っている、「エレクトロニクスの衣食住への侵攻」が始まるのです!
でも、やっぱ有機でやりたいですよね。(ほら、クラーク数の話、憶えていますか?)

MN

2006年8月10日木曜日

ICEL-6

現在、MNはICEL-6のため香港に滞在中です。
当研究室関連では、教員2名、研究員2名、D学生1名が参加して、オーラル2件、ポスター3件の発表でした。発表はすべて無事終わり、一安心です。

ICELには何度か参加していますが、今回地理的なこともあり、中国からの参加者が非常に多かったのが印象的です。やはり地理的な要因でしょうけど、反対にヨーロッパとアメリカからの参加者が非常に少ないのは寂しかったですね。
そのため、オーラル講演でも日本対中国って感じになっていました。

気になるのは、印象として中国(含む台湾)に日本が押されていたのではないかということです。
最近の中国は有機エレクトロニクスの応用研究にもかなり力を入れていて、しかもアメリカやヨーロッパでのポスドク経験者も多く、研究への目の付け所や、発表のうまさで明らかに押されています。もちろん分母の人口が10倍ある国ですから、平均レベルはともかく、両国から上位10名とか固定して選んだらかなりやばいかもしれません。
英語が聞くに堪えないのも日本人が多かったですね....(^^;)
初日の夜に、中国語でのパネルディスカッションをやったそうですが、以前から言われている冗談・・・「そのうち国際会議の公用語は中国語になるのではないか?」・・・ってのが冗談ではすまされなくなってきているかもしれませんね。

MN

2006年3月24日金曜日

”Tech-On!"に紹介記事


当研究室の研究成果である「高次構造」縦型トランジスタについて、日経BP社のウェブサイト”Tech-On!"に紹介記事が掲載されました。
思ったより詳しく、しかもかなり正確な記述がなされています。
ぜひご覧下さい。

2006年3月18日土曜日

研究職を選ぶ理由

インテリジェンスという会社の転職支援サイトでこんな年収ランキングを見つけました。決して、私もぐらが転職先を探していたのではありませんよ。(w
研究室の一部の人には話しましたが、「電気・電子・半導体」業界の職種別平均年収は、院卒がほとんど含まれていないと思われる25歳を除くと、30、35、40歳いずれを見ても「研究開発」がトップです。ちなみに、最近うちの学科の学生でも選ぶ人が多いSEやプログラマ(別のページにあります)と比べても高いですね。なんと、金融系の5位くらいの職種よりも高いです。
他にどんな職種が比較されているかはリンク先を見てください。
これだけを見て、なにも考えずに「それなら研究開発部門を希望しよう!」と思う単細胞君は研究に向きません。ぜひ別の職種を選ぶことをお勧めします。(w

まず、この手の統計は、母集団のかたよりを考えなければなりません。
いろいろ考慮すべきことがありますが、私のこれまでの見聞から推測するに、一番考慮すべきは研究開発職に就いている大卒技術系の人数が企業規模が大きくなるほど飛躍的に多くなる点です。おそらく、ここに挙がっている「回路設計」の集団よりも、「研究開発」の集団のほうが大企業に勤めている人の率が高いものと推測されます。(こんな推測で論理を展開するのも研究者としては不本意ですが、ここでは一般論として考えられることとを述べているつもりです。)少なくともメーカーの範疇では、大企業のほうが中小規模の会社より一般社員の年収は良いですから。

まあそういう点を考慮しても、理系として社会に出るに当たって、研究開発職はそれなりに選ばれたものが就く職種と考えて良いでしょう。志望する価値は十分あると思いますよ。
研究室の学生の皆さんには、なかでも「研究職」に一人でも多く就いてもらいたいと思っています。
工学部を出て企業で研究をやるのですから、サイエンスを目指すことはないと思いますが、それでもエンジニアリングをやるかテクノロジーをやるかは大違いです。エンジニアリングというのは、すでによく知られている法則や方法を組み合わせて、現実の問題を解決することです。開発の仕事は、その色合いが強くなります。それに対して、テクノロジーとは、これまでに使われていなかった現象や材料などを使ってまったく新しい、あるいは、従来とは桁違いの性能を持ったものを創り出すことです。ここで言っている研究職とは、そのようなテクノロジーを創造することを目標とする人のことです。日本語にすると、どちらも技術と訳されてしまうことがあるので、違いが曖昧になってしまうのですが。
自分が良いと考えた研究テーマを精一杯やってテクノロジーの進歩に貢献できたら、何物にも代え難い感動が得られます。しかも、それができる人は、どこの会社(あるいは大学)に行っても研究者として通用します。社名の入った名詞を手に、「○○社の誰それ」と名のったときに、相手が○○社に価値を持ってくれるのか、あるいは、誰それさん個人に敬意を払ってくれるのかの違いです。

MN

2006年3月9日木曜日

コッホ先生来訪


ドイツのフンボルト大から、Norbert Koch先生が来訪されました。
彼は、有機半導体の界面電子現象のプロフェッショナルで、このコミュニティの若手のなかでも世界でトップクラスの研究者です。彼の講演とその後の我々の結果も含めたディスカッションは良い刺激になったと思います。何より、世界トップクラスの研究者とディスカッションすると、彼らの見識が広い上に深いことに感銘を受けます。良い研究、良い論文のためには、総説や教科書を書けるだけの見識が必要であることが実感されますね。
なにより、中村がプリンストン大のKahn先生の研究室に滞在していたときにいろいろと面倒を見ていただいたので、やっとその恩返しもできました。

MN

2006年3月7日火曜日

半導体物語(その4)

吾輩は有機半導体である。教科書はまだない。
だれが使い出したか頓と見當がつかぬ。(訳者注:トランジスタとしては工藤先生が先駆者です。)何でも暗薄いじめじめした研究室で合成された事だけは記憶して居る。吾輩はこゝで始めて人間といふものを見た。然もあとで聞くとそれは大学院生といふ人間で一番獰惡な種族であつたさうだ。此院生といふのは時々我々に電流を流しすぎて焦がすといふ話である。然しその當時は何といふ考もなかつたから別段恐しいとも思はなかつた。但彼のスパチュラでスーと持ち上げられた時何だかフハフハした感じが有つた許りである。
有機導体や半導体材料は我が国の甚だ得意とするところでもある。導電性ポリマー薄膜の合成で白川先生にノーベル賞が授与されたのはまだ記憶に新しい。吾輩の仲間の実用化研究でも、まあ世界の先頭を行つていると思つてよい。
抑も世の中の物質といふものは、金属でなければ心の持ちやうでなんでも半導体である。然らば吾輩の仲間がいかに電流を通し難からうが、半導体だと思ふ者あらば半導体と言つて差し支えなからう。
何しろ、有機分子そのものは閉殻構造である。分子の単位で電子のエネルギー準位が粗方決まつている。然るに、アモルファスであらうが結晶であらうが、或いは多少の不純物が入つていようが、無機の半導体のようにダングリングボンドに悩まされるでもなく、半導体としてキャリアを流すことを得るのが自慢である。
其のやうな性質のお陰で、簡単な設備でもデバイスと言ふものを成し得る。なんでも金で計るのは当世の悪しき習慣であるが、無機半導体で仮にもデバイスを作るのであれば億の単位の設備が必須である。然るに吾輩であれば、ひとまず幾千万円かの出費でどうにか格好が付くといふものである。これは決して貧乏研究室(訳者注:うちの研究室には総額何億かの設備がありますよ。)に優しいと言ふだけではない。低コストで大面積素子を作つて兎も角彼方此方で使おうといふフレキシブルエレクトロニクスなるものには欠かせない性状であると言へよう。
世の中に有機物質は五万とある。当然半導体として使えさうなものも数限りない。それらを組み合わせて、色々な工夫のし甲斐があるのが嬉しいところである。しかも、クラーク数は兎も角、生物圏にありふれた元素を使うので資源的な心配も少なく、燃やせばほとんど二酸化炭素や水になる。
又、植物の光合成が非常に効率の良いことからもわかるやうに、有機色素間の電荷移動を使った光電変換は分子スケールでは極めて効率が高い。これをうまく使えば高感度でしかも特定の色に感度良く反応するセンサーにもなる。太陽電池とやらも作られているさうである。数限りない仲間の中には光るのが得意な輩も沢山ある。
難点と言へば酸素を吸ってアクセプターや電子トラップが出来易いことか。御陰でn型の半導体としては一筋縄ではいかないのは難しい。
いまだ海の物とも山の物とも分からないと言われれば否とは言へぬが、世の中のために役に立つ日が来るのを夢見て研鑽に励んでいる。

MN
漱石先生へのトリビュートとしてみました

2006年3月1日水曜日

半導体物語(その3)

わたしはアモルファス半導体です。
アモルファスって何か知ってますぅ?
語源はギリシャ語のa-morpheで、「はっきりした形を持たないもの」という意味です。優柔不断ってわけじゃないですよぉ。結晶のような長距離秩序がない固体がアモルファスって呼ばれているんです。熱力学的には非平衡な状態なのですが、化学気層成長(CVD)法などの薄膜成長ではそもそも非平衡で膜が作られるので、ごく普通にできちゃいます。
半導体としての歴史は、1968年に多元系カルコゲナイド薄膜のスイッチング特性などが報告されて以来の長い歴史があるんですよ。
その後、1975年に水素化によってアモルファスシリコンのpn制御ができることがわかってからスポットライトを浴びる材料になりました。80年代にはアモルファスシリコンを使ったデバイスが盛んに研究されて、太陽電池やTFTとして皆さんに使ってもらえるようになったんですぅ。*^_^*
でも、TFTでは最近ポリシリコン君に押されているのでちょっと肩身が狭いです。(T_T)
あ、それと、プラスチック基板上でも作れるので、曲げることができる「フレキシブルトランジスタ」や「フレキシブル太陽電池」はわたしが元祖です。これも、最近有機半導体たちに押されているかも。(^^;)
でもね、最近、酸化物アモルファス半導体という仲間が巻き返しをもくろんでいます。
アモルファスシリコンだと、シリコン同士のσ結合による準位が構造ひずみによってとっちらかってしまうので、ギャップ内準位の多いバンド構造になってしまいます。そのせいで、キャリアは捕まっては動くというのを繰り返すホッピング伝導でのろのろしか進めません。
でもね、一部の酸化物アモルファス半導体(例えば、InGaZnOなどが売り出し中♪)では、重金属原子の大きなs軌道同士が酸素をまたいでお隣の金属s軌道と重なることができて、そこそこのバンドをつくれるんですよ。そのせいで、電子だけですが(酸素が電気陰性度高くって電子を持って行くので、重金属原子の軌道は伝導帯になります)移動度がアモルファスとは思えないほど高くなります。結晶半導体のみなさまにはかないませんけど...
こんなおくゆかしいわたしですが、今後ともよろしく♪

MN どこまで続くか....

2006年2月28日火曜日

半導体物語(その2)

僕たちは化合物半導体です。
GaAsなどのIII-V族、ZnSeなどのII-VI族ほかいくつかの種族が仲間です。最近、GaNなどの窒化物半導体も仲間に加わりました。さまざまな仲間がそれぞれの得意技を発揮して活躍しています。ジャニーズのようなものかな?(笑)
かつては主役を期待された時期もありましたが、シリコン君の主役の座は揺るぎそうにないので、彼の苦手な分野で名バイプレイヤーとしての確固たる地位を築いています。僕らがいなければ光通信も携帯電話も成り立たないし、色とりどりに光るLEDも無かっただろうね。
複数の元素でせん亜鉛鉱型の結晶や六方晶を作ります。電気陰性度が違う組み合わせほどイオン結晶性が強くなり、もろくなる上に欠陥の無い結晶を作るのが難しくなります。結晶はすぐに割れてしまうので、やさしく扱ってね♪
なにしろ仲間が多いので、様々なバンドギャップをもったものを結晶の格子常数をそろえて作れるのが強みです。仲間同士を積み上げたヘテロ接合を使ってキャリアの障壁などをつくる「バンドエンジニアリング」は僕らの得意技。これがなければ、半導体レーザーは作れません。また、波動関数が干渉を起こせるコヒーレント長以下のサイズでポテンシャル井戸構造を作ると量子効果が現れ、一つの材料では得られないような性質を発揮させることができます。超格子とか量子ドットと呼ばれています。かっこいい名前でしょ?1970年代から80年代には半導体物性研究の花形だったんですよ♪
レーザーと言えば、光を出すのが僕たちの使命と言ってもいいかもしれませんね。
みなさんも、赤や青に光るLEDが身の回りにあるのは気づいているでしょう? LEDは、みんな僕たちの仲間です。1990年代にGaN君が青く光るようになったので、今では三原色そろってます。赤外や紫外も光らせることができますね。どんな元素を混ぜるかでバンド分散が変わるので、誰もが光るとは限りませんが、輻射再結合が許される仲間は多いのです。
もう一つの自慢はキャリア移動度かな。
僕らの仲間は、シリコン君より足が速いものが多く、InGaAs君などはシリコン君より5倍以上速く電子を流すことができます。それを活かして、100Gz以上の高い周波数でも増幅できるトランジスタが作れます。
でもあんまり大量に使わないでね。クラーク数のランキングを見てもわかるように、僕らの仲間はあんまり埋蔵量が多くないから。シリコン君みたいにありふれてないんだよ。

MN

2006年2月27日月曜日

半導体物語(その1)

私の名前はシリコンです。
ちょっとはずかしいですが、半導体の王様と呼ばれています。
なぜ私が半導体の王様なのかって?
まず、地殻にうなるほど含まれている元素なので、大量に安く手に入ります。
IV族の元素半導体なので、ともかく高純度にすると良い結晶ができ、良い特性が得られます。
このあたり、化合物半導体君とは毛並みが違います。(笑)
同じIV族でも、優柔不断な弟の炭素とはちがってかたくなにsp3軌道を保つし、太っちょ兄貴のゲルマニウムと比べて強い結合エネルギーを持っていますから、非常に完全性の高いダイヤモンド型の結晶を作ります。
バンドギャップも大きすぎず小さすぎず、手頃な1.1eVです。これが小さすぎるとちょっと温度が上がっただけで暴走するし、大きすぎると金属と仲良く電荷をやりとりできません。
同じ仲間同士の結合性軌道と反結合性軌道を使って価電子帯と伝導帯をつくりますから、同じとは言わないまでも電子も正孔もそこそこ速く走れます。
さらに、同じ地殻仲間である酸素君と混ざることによって非常に電気を流しにくい酸化物を作ります。酸素君の関節が柔らかい上に強く手を握ってくれるので、酸化物が安定なだけでなく、酸化物と純粋なシリコンとの境界も世間がうらやむほど完璧です。
こんな完璧主義者ですが、頑固なわけではありません。
周期表でご近所にいる硼素君やリンちゃんを、とけ込むように仲間に入れてあげることができます。ちょっとあまのじゃくな化合物半導体君とは違って、みんなと平等に手をつないであげるから、みんなが活性化してドナーやアクセプターとして働きます。
こんな性質のお陰でLSIもできるわけです。
もちろん、太陽電池やセンサーもお茶の子さいさいです。
えっ、苦手なことはあるかって?
実は....光を出すことだけは大の苦手です。
電気伝導に使うのは、シグマ結合の結合性軌道と反結合性軌道ですから、価電子帯と伝導帯の形がかなり違います。そのため、光子を直接つくるのは難しいのです。(訳者注:これを間接遷移と言います。)
まあ、一つくらい苦手なものがあったほうがかわいいでしょ♪

(というわけで、いくつかの半導体材料の自己紹介を随時翻訳していきます。訳者の怠慢で間違っている点などあれば、ご指摘下さい。)
つづく
MN