2007年4月28日土曜日

More is different!

"More is different."

アンダーソン局在で有名なフィリップ・ウォレン・アンダーソン大先生の1972年の論文[1]のタイトルとして有名な言葉です。
直訳すると、「多は異なり」となりますが、もう少し解りやすく訳するなら「量が増えると予想外のことが起きる」といったところでしょうか。自然現象を還元主義的にとらえた原理からは予想できないような現象が、要素が多数集まった集団でより高次な現象として起こることを指して、様々な科学のジャンルで今でも頻繁に使われる言葉です。材料の物性やその応用を研究する人ならしみじみと実感できるのではないでしょうか。

我々の研究に限っても、例えば電荷移動錯体のワイヤーが特定条件の下で電気力線の方向に成長すること、有機半導体結晶を凹凸のある基板に乗せるとキャリアドーピングが起こることなど、現象を発見してからメカニズムを想像することはできても、知る以前から現象を予想することは困難な現象というのはたくさんあります。
だからモノに関わる研究は面白いんですよね。
院生のみなさんも、新しい more is different を見つけてみませんか?

これ以外にも物性に関連する有名な言葉として、が好きなものをいくつか挙げておきます。

"God made solids, but surfaces were the work of the Devil." by Wolfgang Ernst Pauli
バルク物性の研究に比べると表面は混沌としてなかなか理解できなかったんです。同じことは半導体デバイスを作るときにも言えて、半導体デバイスは表面あるいは界面の理解と制御(場合によっては回避)によって成立しています。

"There's plenty of room at the bottom" by Richard Feynman
「原子スケールで物質を見たり直接操作すれば興味深いことがたくさんできるよ」ってことを、なんと1959年に講演したそうです。STM屋さんや単一分子エレクトロニクス屋さんが好んで使います。

MN

[1] P.W. Anderson, Science 177, 393-396, 1972.