2018年5月6日日曜日

熱電ウォッチ インプレッションその1

先日のブログで書いたように、最近、MATRIX社POWERWATCHという製品を入手しました。
「世界初の熱電スマートウォッチ」という触れ込みでアメリカのテクノベンチャーが売り出している製品です。日本でも発売が始まったので、先陣を切って購入しました。

余談ですが、MATRIX社のCEOであるDr. Akram Boukaiは、Caltechにおけるシリコン系熱電材料の研究でPh.Dを取得し、ミシガン大で准教授として働いていた人だそうです。また、CTOのDr. Douglas Thamも太陽電池や熱電の研究者でCaltechでPh.Dを取得しています。
日本でも優秀で元気の良い若手研究者が、このようなベンチャーを立ち上げられる環境になると良いのですが...

買ったのはベーシックモデルのPOWERWATCH BLACK OPSというもので、スマートウォッチという触れ込みですが、実質的にアクティビティモニターの機能だけです。スマホとの連携は、アクティビティ情報を一方的に送ったり、ファームウェアのアップデートを受け取ったりするだけの機能しかありません。

これが本体前面の拡大写真です。
 この写真では時計モードになっており、これ以外にDaily Activity、Running、Stop Watch、Watch Settingのモードがあります。
時計モードは、現時点ではこの表示のみですが、将来のファームウェアアップデートで複数のウォッチフェイスが選べるようになるそうです。




裏面の拡大写真です。
このモデルは50m防水となっています。
中央の丸い部分はアルミ製で、ここで人体から熱流を取り込むようです。
周囲の質感が異なる部分は、熱絶縁のために樹脂製になっています。ぱっと見の質感が安っぽくならないように、デザインやテクスチャーで頑張っています。



本来なら画面に向かって下側のベルトが付いてるはずの側面です。放熱のためのスリットが入っています。
このBLACK OPSというモデルでは、全体がつや消し黒になっていので一見境界がわかりにくいですが、さきほどの裏蓋周囲からベルトを固定する部分までが樹脂製、表面周囲とスリット部を含む側面の大部分が一体になっていて、こちらもアルミ製です。


つまり、裏面中央のアルミパーツで人体の熱を取り込んで、本体の上面と側面、さらにはこのスリットのアルミパーツで頑張って放熱し、温度差を稼ぐ構造になっています。熱流デザインが重要であることがわかります。

2週間程度使ってみて、まずは一般ユーザーとして感じた長所短所を挙げてみます。

長所

  • 見た目よりは軽く、つけ心地は悪くない。つけて寝ても違和感は少ないレベル。
  • 特にBLACK OPSの金属メッシュベルトは、軽くてしなやか。
  • 充電の心配が不要。
  • 反射型液晶は明るいところでの視認性が良い。
  • これまでのアクティビティメーターとは異なり、体温からも活動量を計算する。
  • 発電量が表示されるので、体温で発電している実感がある。
短所
  • サイズがいかつい。200 m防水のダイバーウォッチ並で、仕事着の長袖シャツだと袖のボタンが留められないものがある。
  • アルミケースは傷が付きやすい。1年で買い換えたくなるかもしれません。
  • 機能が少なく、スマートウォッチとは言い難い。やはり通知機能は欲しい。
  • 睡眠記録は、自分で寝るときと起きたときにボタンを操作するという酷い仕様。 
  • つけていて冷たさを感じるときがある(これはその2で詳しく述べます)。
  • 対応するスマホアプリの出来がひどい。また、シンクロさせるときの通信で頻繁にエラーがでる。

長所短所ありますが、体温発電という売りを抜きにしたら、スマートウォッチとしての価値を感じない人も多いと思います。これは、今後の改良に期待しましょう。
しかし、アクティビティモニターという機能を主役に考えるなら、比較的軽いこと、電池切れの心配がないこと、発電するついでに代謝量もある程度見積もることができることなど、メリットは大きいと思います。
現在手に入る最新の熱電材料技術、回路技術、熱設計のための材料技術を組み合わせて、この程度の値段でこれを世に出したMATRIX社に、敬意を表するところです。

上級モデルとしてPOWERWATCH Xというより高機能なモデルも近日発売されるそうです。こちらは電話着信などの通知機能も付くそうで、スマートウォッチを名乗っても違和感がないと思います。ただし、さらに大きくなるようで、日本人の平均的体格なら大きすぎて使いづらいかもしれません。

長くなりそうなので、研究者・技術者目線での感想は別の投稿で述べます。

0 件のコメント: