2006年2月27日月曜日

半導体物語(その1)

私の名前はシリコンです。
ちょっとはずかしいですが、半導体の王様と呼ばれています。
なぜ私が半導体の王様なのかって?
まず、地殻にうなるほど含まれている元素なので、大量に安く手に入ります。
IV族の元素半導体なので、ともかく高純度にすると良い結晶ができ、良い特性が得られます。
このあたり、化合物半導体君とは毛並みが違います。(笑)
同じIV族でも、優柔不断な弟の炭素とはちがってかたくなにsp3軌道を保つし、太っちょ兄貴のゲルマニウムと比べて強い結合エネルギーを持っていますから、非常に完全性の高いダイヤモンド型の結晶を作ります。
バンドギャップも大きすぎず小さすぎず、手頃な1.1eVです。これが小さすぎるとちょっと温度が上がっただけで暴走するし、大きすぎると金属と仲良く電荷をやりとりできません。
同じ仲間同士の結合性軌道と反結合性軌道を使って価電子帯と伝導帯をつくりますから、同じとは言わないまでも電子も正孔もそこそこ速く走れます。
さらに、同じ地殻仲間である酸素君と混ざることによって非常に電気を流しにくい酸化物を作ります。酸素君の関節が柔らかい上に強く手を握ってくれるので、酸化物が安定なだけでなく、酸化物と純粋なシリコンとの境界も世間がうらやむほど完璧です。
こんな完璧主義者ですが、頑固なわけではありません。
周期表でご近所にいる硼素君やリンちゃんを、とけ込むように仲間に入れてあげることができます。ちょっとあまのじゃくな化合物半導体君とは違って、みんなと平等に手をつないであげるから、みんなが活性化してドナーやアクセプターとして働きます。
こんな性質のお陰でLSIもできるわけです。
もちろん、太陽電池やセンサーもお茶の子さいさいです。
えっ、苦手なことはあるかって?
実は....光を出すことだけは大の苦手です。
電気伝導に使うのは、シグマ結合の結合性軌道と反結合性軌道ですから、価電子帯と伝導帯の形がかなり違います。そのため、光子を直接つくるのは難しいのです。(訳者注:これを間接遷移と言います。)
まあ、一つくらい苦手なものがあったほうがかわいいでしょ♪

(というわけで、いくつかの半導体材料の自己紹介を随時翻訳していきます。訳者の怠慢で間違っている点などあれば、ご指摘下さい。)
つづく
MN

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