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2022年7月6日水曜日

解析と考察(55)

ここ数ヶ月、検査陽性者数がふらふらしながら長期的には漸減していたので、先月後半からの変化が増加傾向なのかゆらぎなのかが判別できませんでした。ここにきて、 東京都と大阪府の推移が明確な増加フェーズに入ったように見受けられます。今月後半には、1〜2月の前回ピークと同じレベルに達する勢いです。注意が必要ですね。



2022年5月17日火曜日

解析と考察(54)

大型連休によるイレギュラリティも収まってきたと思われますので、グラフを更新します。検査陽性者数は、連休中の一時的な減少と終わった直後の増加を無視すれば、漸減傾向が続いているようです。死亡者数は、さらに減少傾向が強くなっています。


なお、全国的には上記のような傾向が言えるのですが、今回は都道府県別の検査陽性者数グラフも見てみましょう。線が多いのですべてにラベルはふりませんが、北海道と沖縄県は明らかに3月から増加を続けているようです。また、目立つところでは山形県が大型連休中から急増しています。




2022年4月8日金曜日

解析と考察(53)

先週見られた傾向よりは増加が緩やかになっていますので、更新したグラフを掲載しておきます。

ところで、いつのまにか53投目になったこのCOVID-19解析と考察シリーズ、継続的に見に来ている人もいるようです。しかし、最近初めて見た人は「自分の研究と関係無いものを何故延々とブログ投稿しているのだろう?」と思った人もいるでしょう。このあたりで、そもそも何故こんなものを掲載しているのかを説明しておきます。

私(中村)が約2年前に感じた不満は、ニュースやウェブサイトで表示している陽性者等のグラフはリニアプロットばかりであるという点にありました。感染症が広まるという現象は微分方程式で書けて、人口に対する感染者の割合が少ないときは解は微分方程式の定数が不変であれば単純な指数関数になります。それならセミログプロットすることで直線になりますので、増加や減少が定常的なのかどうかが一目瞭然です。例えば下のグラフで、2月から3月にかけてグラフ上で直線的に陽性者数が減っていることから、この間ずっと同じ微分方程式に従っていた、すなわち一人の感染者から平均何人の新たな感染者が出るかという値がずっと一定であったということがわかります。また、グラフ上で直線的に増加している時期には、このままならいつ頃に社会的限界に達するかが直線を延ばすだけで簡単に予測できます。

この他に、セミロググラフには以下の利点があります。

  • データの大きさが何桁にもわたる場合にも、小さいところでの変動が見やすい。
  • 下記の全国と大阪府の比較のように、10倍以上大きさが異なる値が連動して変化している場合でも、両者が常に比例しているなら同じ形のグラフを上下に平行移動したものになるため、比例関係にあるのかどうかが分かりやすい。
というわけで、実験結果を考察するプロならこのように見る、ということを学生や同業者でない方々に分かってもらうために、ブログに連載を始めたのです。
いつも見てくれているのは同業者が多いようですが…(^^



2022年4月3日日曜日

解析と考察(52)

陽性者数について、3月21日に「まん延防止等重点措置」が多くの地域で解除された直後から、驚くほど綺麗に下り勾配が登り勾配に切り替わりました。今は多くの人が移動する時期なのでこれからまだ変動する可能性が高いと思われますが、現時点ではおよそ1ヶ月で倍程度の増加率でしょうか。このまま進むとGWに活動制限が必要になってくるかもしれません。

入院治療を要する者の数に対する死亡者数の率は、幸いさらに低下傾向が見られます。ブースター接種が効いてきたのかもしれません。



2022年3月19日土曜日

解析と考察(51)

最新のグラフから分かることを説明します。

陽性者数は2月初頭より一定割合で漸減しており、1.5ヶ月にわたってその減少係数は一定値を保っています。これは、実効再生産数が1よりわずかに小さい状態を極めて安定して保っていることを示します。陽性者数が44日で半分になるというこれまでにない遅いペースです。これから「まん延防止等重点措置」が解除されるとともに人の移動や新たな出会いが増える時期ですから、どこかの時点で増加に転じるかもしれません。

死亡者数は、前々回のピークまでの結果から導き出した入院治療を要する者の数からの換算式で換算したグラフと相似形になってきました。従って診断から死亡までの時間スケールはあまり変わっていないようです。死亡する確率は前回のピークのときに急に低下したのですが、今回もそれと同じ率を保っているようです。



2020年7月2日木曜日

解析と考察

データでモノをいう仕事をしている実験屋の一人として、現状を考察してみました。

図は、縦軸が日本国内のCOVID-19新規患者数(Googleニュース特設サイトより)、横軸が2020年1月1日からの通し日数です。わかりにくいので、上に月の名前を入れて、区切りに線を入れています。
各所に、片対数グラフで直線、すなわち、日数経過に対して指数関数的に増加している区間が明確に見られます。感染症が広まる初期には指数関数的に新規感染者数が増えることが知られているそうです。1人がn人に移すというのを定常的に繰り返すなら、高校生でも分かる結果です。
点線は、明確に直線になっている区間に対して f(x)=2^((x-x0)/tau) という関数をフィッティングさせた結果で、x0はあまり意味がないので捨て、何日で2倍になるかをあらわす変数であるtauのみ表示しています。
第一の指数関数的増加区間は、主に武漢型のウイルスが広まったと言われている期間に相当します。途中で折れ曲がって第二の指数関数的増加区間に入りますが、これはより感染力が強い欧米型のウイルスが広まったと言われている期間です。
防止策を実施したためか、4月半ばから減少に転じています。減少時の推移もこのグラフで直線に見えるので、それをそのまま外挿すると7月頭には、1桁/日に到達していたのではないかと思われます。

さて、今は第三の指数関数的増加区間の途中で、7/1現在で4/1と同レベルの新規患者数です。第二区間よりは増加が緩やかで、13.6日で2倍のペースですが、このまま進むと8月前半には4月のピークと同じ新規患者数に到達します。



2018年5月6日日曜日

熱電ウォッチ インプレッションその2

「世界初の熱電スマートウォッチ」MATRIX社のPOWERWATCHについて、その1では一般ユーザー目線での感想を書きましたが、その2として、研究者・技術者目線での感想を書きたいと思います。

MATRIX社のTECHNOLOGYのページを見てもわかるように、このPOWERWATCHは、従来からある典型的な熱電モジュールを使っているように見えます。熱電材料の種類について具体的な発表は見つけられませんでしたが、CEOがシリコン系の熱電材料を研究していた人であること、それから、TECHNOLOGYのページにシリコンナノテクノロジーを使っている旨記述されていますので、おそらく、ナノ構造(フォノン散乱を増やして熱伝導率を下げる効果がある)を作り込んだシリコン系熱電材料ではないかと推測されます。
従って、同社のウェブページにあるモジュールの絵こそ何の変哲もないセラミックプレートで挟まれたπ型モジュールですが、「従来の」熱電材料よりもかなり熱伝導率を抑えているのではないかと予想していました。

しかし!
実際につかってみたところ、その期待は裏切られました。

 POWERWATCHは、WATCHモードで竜頭を回すと、左の写真のように裏面プレートと表ケースの温度を表示します。
左の写真は室温25℃前後の屋内での定常状態ですが、Skin Temp 31℃、Case Temp 31℃となっています。
おかしいなと思って、いろいろな場所でいろいろな状態を試しましたが、春の日中の気温では、どこにいても表示される温度差はせいぜい1℃です。
こちらが標準のWATCHモードです。12時のところから2時のあたりまで白いバーが伸びていますが、これがリアルタイムの発電量を表しているそうです。外周の数字がパーセントを表しているのでしょう。100%が何を意味するのかは不明です。
上の写真と同じ状態で表示だけ切り替えたので、温度差1℃以下のとき15%の発電量ということになります。


試しに、裏面プレートを42℃のお湯につけ、表面ケース側を手であおいで冷やしてみたところ、それでようやく出力70%くらいでした。100%とは体温に対してケースを氷水で冷やすくらいのレベルなのでしょうか。

さて、2週間ほど使ってみましたが、日常生活時には発電量5〜25%の間でした。温度差はせいぜい2℃です。さらに気になるのは、その1でも書いたように、 POWERWATCHを装着している腕に常時冷たさを感じるのです。皮膚が敏感な人なら不快に感じるかもしれません。
これは、皮膚が寒さを感じるほど局所的に熱を奪い、側面のフィンも含めたケースの熱設計を頑張ることでモジュールに熱流を与えているにも関わらず、モジュールの熱コンダクタンスが大きいために1℃程度しか温度差がつかないということを意味しています。時計のサイズと比較してモジュールはふたまわりくらい小さいと推測されるので、熱電材料の熱伝導率はかなり高いのではないでしょうか。最新技術を導入しているとは言えシリコン系材料(推測ですが)を使っているからかもしれません。

なお、このバージョンのPOWERWATCHには、もう一つ弱点があります。それは、内側プレートより外側ケースのほうが高温になると発電しないことです。実際に、屋外で直射日光に当たると、ケースが黒いため(これはBLACK OPSを選んだ私が悪い?)に外側ケースの温度が上がり、すぐに発電量がゼロになります。
これについては、今後発売されるPOWERWATCH Xで改良され、ケースのほうが高温の場合も発電するようになるそうです。温帯から熱帯地方で、屋外で使う時間が長い場合は、そのほうが良いでしょうね。
MATRIX社では電源回路も独自に最適化設計しているそうですが、逆極性で発電できないということは昇圧回路がかなり厳しいのでしょうか?
おそらく、モジュールサイズが小さく、直列数が少ないので、温度差が付かないことも相まって出力電圧が低いのだと推測します。チャージポンプ回路でかなり頑張って昇圧している(推測)ので、極性を切り替えるためのダイオードやトランジスタスイッチが使いにくいのかもしれません。
"X"のほうは通知機能を使うためにBluetooth LEを常時動作させるはずですから、おそらくモジュールのサイズがかなり大きくなるのでしょう。実際、ケースのサイズは一回り大きくなります。そうすれば、出力電圧もより上げられますから、逆極性発電のための回路も組みやすくなるのではないかと推測されます。

まだまだ気づいたことはありますが、ここらへんでPOWERWATCHを使って実感した、このようなウェアラブル用途に熱電変換技術を使う場合の要求事項をまとめておきます。
  1. モジュールの熱伝導率は樹脂と同程度以下であるべき
  2. ベルトの面積がもったいない。ここも熱電変換に使うべき。
  3. 常用状態でモジュールの出力電圧が1V程度あったほうが良い。
つまり、0.1 W/mKオーダーかそれ以下の熱伝導率で、フレキシブルで、かつ、なるべくゼーベック係数が大きい熱電材料/モジュールが必要!

まさに、5年くらい前から私が主張して、研究の目標としていることですね。
例えば、我々が研究しているカーボンナノチューブ/タンパク質複合熱電材料は、熱伝導率0.1 W/mK以下の状態も得られており、これなら1を満たします。それを紡糸して布に縫い込んだ「熱電布」は、フレキシブルで、まるでトレーナーやリストバンドのように身につけられます。これは2を満たします。
3の電圧は、低熱伝導率のために得られる十分な温度差(例えば、我々の熱電布は、屋内で片側を指で触れると5℃程度の温度差が生じます)と力業の直列数でも満たすことができると思いますが、それとは別に、我々が研究している巨大ゼーベック効果が使えるようになると、体温から1 V以上の電圧が余裕で出せます。

我々が目指しているところは間違っていない!
これが実体験として確信につながったので、4万円強の値段はリーズナブルでした。

熱電ウォッチ インプレッションその1

先日のブログで書いたように、最近、MATRIX社POWERWATCHという製品を入手しました。
「世界初の熱電スマートウォッチ」という触れ込みでアメリカのテクノベンチャーが売り出している製品です。日本でも発売が始まったので、先陣を切って購入しました。

余談ですが、MATRIX社のCEOであるDr. Akram Boukaiは、Caltechにおけるシリコン系熱電材料の研究でPh.Dを取得し、ミシガン大で准教授として働いていた人だそうです。また、CTOのDr. Douglas Thamも太陽電池や熱電の研究者でCaltechでPh.Dを取得しています。
日本でも優秀で元気の良い若手研究者が、このようなベンチャーを立ち上げられる環境になると良いのですが...

買ったのはベーシックモデルのPOWERWATCH BLACK OPSというもので、スマートウォッチという触れ込みですが、実質的にアクティビティモニターの機能だけです。スマホとの連携は、アクティビティ情報を一方的に送ったり、ファームウェアのアップデートを受け取ったりするだけの機能しかありません。

これが本体前面の拡大写真です。
 この写真では時計モードになっており、これ以外にDaily Activity、Running、Stop Watch、Watch Settingのモードがあります。
時計モードは、現時点ではこの表示のみですが、将来のファームウェアアップデートで複数のウォッチフェイスが選べるようになるそうです。




裏面の拡大写真です。
このモデルは50m防水となっています。
中央の丸い部分はアルミ製で、ここで人体から熱流を取り込むようです。
周囲の質感が異なる部分は、熱絶縁のために樹脂製になっています。ぱっと見の質感が安っぽくならないように、デザインやテクスチャーで頑張っています。



本来なら画面に向かって下側のベルトが付いてるはずの側面です。放熱のためのスリットが入っています。
このBLACK OPSというモデルでは、全体がつや消し黒になっていので一見境界がわかりにくいですが、さきほどの裏蓋周囲からベルトを固定する部分までが樹脂製、表面周囲とスリット部を含む側面の大部分が一体になっていて、こちらもアルミ製です。


つまり、裏面中央のアルミパーツで人体の熱を取り込んで、本体の上面と側面、さらにはこのスリットのアルミパーツで頑張って放熱し、温度差を稼ぐ構造になっています。熱流デザインが重要であることがわかります。

2週間程度使ってみて、まずは一般ユーザーとして感じた長所短所を挙げてみます。

長所

  • 見た目よりは軽く、つけ心地は悪くない。つけて寝ても違和感は少ないレベル。
  • 特にBLACK OPSの金属メッシュベルトは、軽くてしなやか。
  • 充電の心配が不要。
  • 反射型液晶は明るいところでの視認性が良い。
  • これまでのアクティビティメーターとは異なり、体温からも活動量を計算する。
  • 発電量が表示されるので、体温で発電している実感がある。
短所
  • サイズがいかつい。200 m防水のダイバーウォッチ並で、仕事着の長袖シャツだと袖のボタンが留められないものがある。
  • アルミケースは傷が付きやすい。1年で買い換えたくなるかもしれません。
  • 機能が少なく、スマートウォッチとは言い難い。やはり通知機能は欲しい。
  • 睡眠記録は、自分で寝るときと起きたときにボタンを操作するという酷い仕様。 
  • つけていて冷たさを感じるときがある(これはその2で詳しく述べます)。
  • 対応するスマホアプリの出来がひどい。また、シンクロさせるときの通信で頻繁にエラーがでる。

長所短所ありますが、体温発電という売りを抜きにしたら、スマートウォッチとしての価値を感じない人も多いと思います。これは、今後の改良に期待しましょう。
しかし、アクティビティモニターという機能を主役に考えるなら、比較的軽いこと、電池切れの心配がないこと、発電するついでに代謝量もある程度見積もることができることなど、メリットは大きいと思います。
現在手に入る最新の熱電材料技術、回路技術、熱設計のための材料技術を組み合わせて、この程度の値段でこれを世に出したMATRIX社に、敬意を表するところです。

上級モデルとしてPOWERWATCH Xというより高機能なモデルも近日発売されるそうです。こちらは電話着信などの通知機能も付くそうで、スマートウォッチを名乗っても違和感がないと思います。ただし、さらに大きくなるようで、日本人の平均的体格なら大きすぎて使いづらいかもしれません。

長くなりそうなので、研究者・技術者目線での感想は別の投稿で述べます。

2018年4月21日土曜日

個人的新技術実証実験

未来の技術を提案する立場にある以上、今普及しつつある技術は表面的でなく実体験として知っておく必要があります。
そのため、ときどき「物好き」なことをやります。

NAISTに異動した際の住み替えをきっかけに、自宅のゼロエミッション化を試みました。
当時の予算内でつけられるソーラーパネルの制約からエネルギー自給率は70%程度でしたが、電気で24時間冷暖房していることを考えるとまあ合格ラインでしょうか。
今なら、もっと効率の良いパネルが安くつけられるので、オール電化でも年間通算での自給率100%は達成容易だと思います。
個人予算でやってみると特に実感しますが、金銭的に元をとるのに10年くらいかかりますので、太陽光発電関連のハードウェアはすべて寿命が長ければ長いほど良いです。10年でパネル張り替えなんてもってのほかです。パワーコンディショナーくらいなら取り替えは容易ですが、パネルは住宅本体と同等以上の寿命がないとミクロ経済的にはメリットがありません。目安は、実使用環境での寿命30年以上ですね。

最近では、自宅IoT化をぼちぼちと実験していますが、これは住宅電気設備や家電製品にまだまだネットワーク対応機器が少ないのがネックです。
GoogleホームとNature Remoを使っていますが、現時点では、テレビ、一部の照明、エアコン、空気清浄機のみがネット上から、あるいは、Googleホームを通じて音声でいじれるのみです。出先から、自宅リビングの温度と湿度がわかるのは、おまけです。
次は、玄関のロックを対応させたいのですが、まだいろいろ制約が多いので様子見中。
今は、住宅内の電気機器、冷暖房、風呂の給湯などをどうクラウドから制御するかがネックですが、その次に来るのは住宅内の状況を細かく知りたいという要求でしょう。
この段階になって、簡単に設置/撤去できる小型/薄型のセンサーパッチのようなものがほしくなり、そのためにエナジーハーベスターが必要不可欠になるでしょう。

ちなみに、学生や若い人の中には住宅のIT化はつい最近始まったかのように思っている人が多いと思います。実は、これで3回目のブームです。
詳しくは、日経XTECHのこの記事をご覧ください。
1990年代に「ホームオートメーション」、2000年代に「IT住宅」、そして今は「スマートホーム」と言葉を変えていますが、国と業界が主導してなにやら画策することを延々繰り返しています。いくら国や業界が主導しても、周辺技術や、普及技術とのコンパチビリティ、さらには、社会的需要がすべて満たされないと技術は普及しないという典型例ですね。関わっている人たちも、1段1段技術と社会的需要をすりあわせてゆくための方便に、すぐにでも実現できるようなことを言っているだけかもしれません。
この段階ごとに使える要素技術が増えていますので、30年前と比べて簡単に実現できることが飛躍的に増えています。あたりまえに使われる技術になるのはさらに10年以上かかるのかもしれませんが、そのためには要素技術の基礎研究はすでに行われているべきです。

さて、これ以外に、「身の回りで熱電変換を使おう」実証実験を進めています。
最初に購入したのは、BioLite社のCampStove 2というアウトドア用品です。これは何度か試しましたが、電源はないけど枯れ木は燃やせるという環境でどんどん発電します。スマホの充電には十分です。調理にも使ってみましたけど、火加減が難しいので、山キャンプなどかなり過酷な状況でないとありがたみは少ないかもしれません。
これは、必要な人には今でも十分使える技術と言えるでしょう。

我々の研究ターゲットに近いところで、MATRIX社のPOWERWATCHという製品でウェアラブル熱電の使用具合を試し始めました。
これについては、別の投稿で詳しく書きます。

2017年3月16日木曜日

応用物理学会の規模

現在、応用物理学会に参加中です。
会場で、研究室の学生から「応用物理学会って規模は大きいんですか?」という質問を受けたのですが、他の学会と比べたことが無かったので答えられませんでした。
そこで、ちょっと調べてみました。

以下は、「日本学術会議協力学術研究団体」のうち、理工農系で会員数が多い学会です。

土木学会       約42,000名
日本機械学会     約35,000名
日本建築学会     約34,000名
電子情報通信学会   約30,000名 *
日本化学会      約30,000名 *
電気学会       約22,000名
応用物理学会     約21,000名 *
情報処理学会     約19,000名
日本物理学会     約17,000名 *
空気調和・衛生工学会 約16,000名
日本分子生物学会   約13,000名
高分子学会      約12,000名 *
日本農芸化学会    約11,000名
日本生化学会     約10,000名
(会員数は、各学会のウェブサイトから拾いましたが、学会によって定義のブレがあると思います。)

土木学会が最大だったのですね。知りませんでした。
応用物理学会は、会員数で言うと7番目でした。

なお、「*」が付いた学会は、当研究室に関わりのある学会です。

2015年11月8日日曜日

オープンキャンパス開催中

本日は、高山サイエンスタウンフェスティバルの一貫としてのオープンキャンパス2015(一般公開)です。
1Fのロビーには、小学生達が沢山来て盛り上がっていますね。

当研究室も、有機太陽電池や糸状熱電材料による「発電する布」などのデモンストレーションを行っています。

2015年3月13日金曜日

応物春季講演会参戦中

現在、春の応用物理学会講演会に参加中です。

まずはご報告。
前回の阿部君に引き続き、今回は寺岡君の修論の成果を松原助教が発表した講演がPoster Awardを頂きました。








さて、これから、応物学会員である赤崎先生、天野先生、中村(修二)先生のノーベル賞受賞記念講演が始まります。サテライト会場も含めて数千人の参加者がリアルタイムで講演を聴きますから、すごいイベントですね。
今回、応物学会関係者から一挙に3名の受賞者が出たので、この時間帯だけはいつもと違ってお祭り騒ぎです。

P.S. 会長の河田先生の挨拶では、本日の講演会参加者は6600人だそうです。
本会場、サテライト会場合わせて、この全員が記念講演を聴いています。

2014年7月4日金曜日

エネルギー収支

今回は、研究にも関連するけど、個人的な実験のお話。

今の自宅も、入居後2年ちょっと経過しました。以前、このブログでも紹介したように、この家はエネルギー自給自足に向けた個人的な実験でもあります。
ここで、2013年の「実験データ」を紹介します。


ちょっと煩雑な図ですが、緑の折れ線はこの1年間の1日ごとの発電電力量です。薄緑で塗りつぶされた分は、発電電力量-消費電力量の収支における黒字分(つまり作った電力のほうが多い日です)、薄赤で塗りつぶされた分は、逆に赤字分です。
我が家の2013年エネルギー自給率は74%でした。冷暖房と給湯を電力でまかなっているわりには、なかなかの自給率だと思います。しかも、原則的に24時間冷暖房を使った結果です。やはり、「高気密・高断熱」の威力はなかなかのものですね。

緑の点線は何かというと、我が家のシステムで毎日がほぼベストコンディションだったら発電できるであろう理想曲線をおおざっぱに引いてみたものです。これはかなり荒い近似なので、いずれもっと精度を上げた経験式と比較してみます。
本来なら一番発電量が多くなるはずの夏場にかけて、梅雨空のせいで見事に大損していることがわかります。
この手のデータを初めて見る人は、「こんなに発電しないのか!?」と思われるでしょう。でも、我が家の2013年年間発電電力量実績 6707 kWhに対して、日照データと工学的な経験式から推定される2013年の総発電量は 6262 kWhです(こちらのサイトを使わせて頂きました)。つまり、これでもこの地域の水準より発電しているほうなのです。

緑と赤の階段状の線は、それぞれ発電と消費の1ヶ月平均電力量です。
いかに冬場に消費電力量が大きいかがわかりますね。
この差の第1の原因は冷暖房です。どちらもヒートポンプによるのですが、夏は外気温最高35℃のときに室温は27℃くらいですから、温度差は最大8℃。それに対して、冬は下手をすると外気温-5℃くらいまで下がります(このあたりは、気候的に東北地方南部太平洋岸相当なのです!)から、室温を20℃に保つとして温度差は25℃もあります。この温度差で熱を逆流させるのですから、大変です。
もう一つの原因は温水器です。これもヒートポンプですが、外気温マイナスのところで水を45℃近くにまで暖めるわけですから、熱を運ぶために要する仕事はさらに大きくなります。
おかげで、12月~2月は大赤字になるわけです。
一方、一番黒字になるのが5月です。これは西日本ならたいていこうなるようです。
日射量が大きいにもかかわらず、梅雨もなく、台風や夕立も来ないからです。さらにもう一つ、気温が高すぎないこともプラスになります。
一般的な半導体では、温度上昇とともにバンドギャップが小さくなります。そんなの大したことないだろうと思われるかもしれませんが、結晶シリコンの場合、25℃に対して70℃では約2割も出力低下します。我が家のパネルは、結晶系ではなく薄膜シリコン系タンデムなので(残念ながら「有機」ではありません ^^)、元々バンドギャップが広いためにこの低下が少なめになります。さらに、「夏場のアニール効果」で効率が回復する現象が拮抗するため、あまり目立ちません。

さて、この収支を改善するには、暖房と給湯の効率をいかに上げるかです。
快適かつ現代的(というより未来志向)な生活を犠牲にしないことが前提ですから、冷暖房をケチるつもりはありません。
まず、ターゲットは給湯です。娘と家内には、冬場に頭を洗う日を間引けと言っているのですが....
今年の冬は、こっそり給湯温度を下げてみましょうか。

2014年4月24日木曜日

有機エレクトロニクス研究もこれからが本番

TechOn改め日経テクノロジーOnlineに、4月1日から有機エレクトロニクスのテーマサイトができました。
有機エレクトロニクス関連のニュースが次々と掲載されていますので、是非みなさんもご覧下さい。

2014年2月28日金曜日

エコも継続が力

少し前になるのですが、奈良県内、明日香村のさらに南の山中にある壺坂寺(正式には、壷阪山南法華寺だそうです)を訪問しました。約1300年前の藤原京の時代に創建されたお寺です。
ここは、西国三十三所の巡礼地として、あるいは、眼病に御利益がある寺としても知られているだけでなく、ユニークな活動の数々でも知られています。実はもう一つ、太陽電池関係者に名が知れた寺でもあります。

こんなふうに、普通に歴史のある寺院で、右側の三重塔は、再建されているとはいえ築520年ほど経た歴史的建造物です。

この塔をライトアップしている照明がこれです!
少し片鱗が見えてきましたね。このお寺は、ただ古いだけではないのです。よく見るとLED照明を取り入れていることがわかります。

このお寺の数ある特徴の一つで、シルクロードの終着点であることを意識してか、インドとの交流を盛んに行っていて、インドで製作された石像や石の建造物を次々と増やしています。これは、全長50mにもなる石に刻まれた「釈迦一代記」です。

これを照らす照明も、もちろんLEDです!

これもインドで製作されたという全長20mもある観音像ですが、ここが今回の訪問の最大の目的地でした。といっても、観音像自体は極めて普通の昭和に作られたものなので、これなら120mもある牛久大仏のほうが巨大さで物珍しいのですが...

この観音像をライトアップする照明は、さすがにLEDではパワー不足なのか、昔ながらのハロゲン灯(たぶん)です。
しかし、有名なのはこれではなく、これを点灯させるための電源です。


これです!
このパネルで発電した電力をバッテリーに蓄えて、観音像のライトアップを行っているそうです。なんと30年以上前に設置されたソーラーパネルで、国内で稼働している中でも最古級と言われています。当時の住職が「観音様を照らすには自然のエネルギーを使いたい」と考えて、太陽光発電を採用したそうです。先見の明ですね。

”高取町壷阪の壷阪寺(常盤勝範住職)で夜間、高さ20メートルの大観音石像を照らすライト。その電源に使われている太陽光発電装置が、民間用では国内でも最古級の実証例として研究機関などから注目を集めている。”
奈良新聞の記事より転載)

そう、これは、国内で最も長く続いているフィールドテストとも言えます。シャープのパンフレットにも、長期信頼性の証として掲載されています。


こんなふうに、太陽電池をより長寿命化するにはどこの劣化が問題になるのかなどの貴重なデータを、これからも提供してくれることでしょう。

住宅用としても、パネル寿命30年以上というのはひとつの目安で、日本の一般木造家屋の平均建て替え年数と同程度になりますから、これくらい持てば新築時に屋根に設置したものを、本体の建て替えまで交換する必要がなくなります。もちろん、屋根のメンテナンスは10~15年程度で行うべし、とも言われていますので、本体費用と作業費用さえ安ければ15年程度というのも目安にできるかもしれません。
しかし、一般家庭用としては新築時に屋根一体型としてソーラーパネルを設置するケースが増えてくると思われますから、そのような場合は、やはり30年もって欲しいのです。木造家屋の寿命自体は、きちんとメンテナンスをすれば50年以上、素材と手の入れ方によっては何百年にもなりますから、30年でも足りないくらいです。(我が家も一体型ですが、果たして何年持つかな?)私が有機太陽電池の応用として屋外固定用途を想定しない理由の一つが、これです。

それはそうと、この看板に書かれた「サンシャインプロジェクト」、懐かしいですね~。私が学生時代に使っていた研究設備の大半は、このプロジェクト関連の予算で整備されたものでした。

2014年1月21日火曜日

気になる記事

TechOnから気になる記事を2件。

MITが「熱光起電力発電」で変換効率3.2%を実現、理論的には80%も
太陽光→熱→特定波長の光→電気という変換で、太陽の広範囲な波長にわたる光をいったん熱にしてから、光電変換に適した波長の光に変換しようという技術です。この熱→光変換がどこまで効率が上がるかが勝負ですね。
80%いければスゴイですが、現状では、太陽光→熱→電気の4.6%のほうがまだ上にいます。

プロペラによる海流発電、低コストな有機薄膜太陽電池---分散型エネルギーに向けたOISTの研究
こちらは、以前からの知り合いであるYabing Qi先生の研究が少しだけ紹介されています。いろいろな意味でOISTには親近感があるので、是非頑張って欲しいと思います。
時代は分散発電!

2013年6月9日日曜日

ウェアラブル

プライベートでも、研究に関連するいろいろな実験(あるいは耐久試験)をしていますが、今回の実験はこれ。

オーストリアの会社が売り出しているSunnyBAGという製品です。敢えて判りやすい色を買ったので、一目瞭然かと思いますが、フレキシブル太陽電池付きのバッグです。
2枚貼り込まれているのは、フレキシブルな三層スタック太陽電池です。詳細は今ひとつ不明です。
ここにバッテリーパックがあり、これで発電した電力を貯めるとともに、USB出力からモバイルデバイスを充電します。
バッグの蓋を開けるときに、いやでもソーラーパネルは曲がります。よほど曲げに対する耐久性に自信があるのでしょうね。
パネルの最大出力は3Wだそうです。パネル面積がおよそ380cm2ありますから、変換効率としては8%くらいになります。

フレキシブルソーラーパネルやバッグ本体はオーストリア製で、このバッテリーパックはドイツ製なので、価格は€208(ついでに送料が€35)と、それなりのお値段します。これに日本の関税¥1,200と消費税¥830が加わりますので、覚悟して下さい(?)。




さて、いずれアクションスペクトルでも測定してみるかな?
続報、ご期待下さい。

2012年12月7日金曜日

本が出ました!

この春からグリーンフォトニクスプロジェクトで準備を進めていた「ひかりエネルギー革命 ~グリーンフォトニクス~」がついに出版されました!

物質創成科学研究科の総力を挙げてつくった本です。
単なるPR本にはしないよう、学部上級生~大学院生のための教養本になるよう努力したつもりです。

ぜひご一読を。

アマゾンでも購入できます。
私の手元にも、在庫が積み上がる予定ですが....

2012年12月5日水曜日

MOST INNOVATIVE ORGANIZATIONS

Thomson Reuters が、2012年の THE WORLD’S TOP 100 MOST INNOVATIVE ORGANIZATIONS を発表していました。
例によって、日本の企業(組織)を拾い出してみます。(アルファベット順)


Brother Industries
Canon
Denso Corporation
FANUC
FUJIFILM
Fujitsu
Hitachi
Honda Motor Company
Jatco
Mitsubishi Electric
Mitsubishi Heavy Industries
NEC
Nippon Steel & Sumitomo Metal
Nitto Denko
NTT
Olympus
Panasonic
Ricoh
Seiko Epson
Sharp
Shin-Etsu Chemical
Sony
TDK
Toshiba
Toyota Motor Corporation

25社もありますね。まだまだ、日本の製造業も健在です。
ひとつ残念なのは、他国ではランクインしている公的研究所が日本からは入っていないことです。
民間企業の研究開発投資が冷え込む中、事業化に近いところまで主導する研究所が出てきてもよいのではないでしょうか?

2012年11月28日水曜日

Foxconn

シャープに出資するや否やという話題で鴻海精密工業の名前を目にする機会も増えましたが、ここを筆頭とするフォックスコン・テクノロジー・グループ(鴻海科技集團)は、世界最大のEMSグループとして有名です。
アップルの製品も多くがこのグループの工場で作られています。
その工場の多くは台湾ではなく中華人民共和国本土にあるのですが、中でも深セン市にある富士康科技集団の工場は、その大きさが時折話題にあがります。
どれくらい広いのか、Googleで見てみましょう。

まず、大きさの実感のために、私がかつて働いていたことがある東レ滋賀事業場を見てみます。















赤枠で囲ったのが、事業場のおよその範囲(寮・社宅エリアを除く)ですが、どれくらいの広さか判りますでしょうか?
赤枠の右のほうにある黄土色の部分は、サッカーができるくらいのグラウンドです。大規模な工場は他の事業所や外国にあるので、ここにはあまり巨大な建物はないですが、それでも様々な機能を持った本部的な事業所ですから、かなり広いと思います。右上にあるJRの駅から、赤枠の左下のほうにある研究所エリアまで、歩くとだいたい20分くらいだったと思います。

ここでも十分だだっ広いと思っていたのですが....
















これがほぼ同じスケールにした「富士康科技集団鴻富錦保税工廠」の航空写真です。
上下にはみ出てますがな。
間違いなく、場内移動は徒歩不可です。
こんなのが中国本土内に20箇所近くあるそうで....

いまや、コンシューマーエレクトロニクスは、こういう規模で作る時代になってしまったのですね。