2014年7月4日金曜日

エネルギー収支

今回は、研究にも関連するけど、個人的な実験のお話。

今の自宅も、入居後2年ちょっと経過しました。以前、このブログでも紹介したように、この家はエネルギー自給自足に向けた個人的な実験でもあります。
ここで、2013年の「実験データ」を紹介します。


ちょっと煩雑な図ですが、緑の折れ線はこの1年間の1日ごとの発電電力量です。薄緑で塗りつぶされた分は、発電電力量-消費電力量の収支における黒字分(つまり作った電力のほうが多い日です)、薄赤で塗りつぶされた分は、逆に赤字分です。
我が家の2013年エネルギー自給率は74%でした。冷暖房と給湯を電力でまかなっているわりには、なかなかの自給率だと思います。しかも、原則的に24時間冷暖房を使った結果です。やはり、「高気密・高断熱」の威力はなかなかのものですね。

緑の点線は何かというと、我が家のシステムで毎日がほぼベストコンディションだったら発電できるであろう理想曲線をおおざっぱに引いてみたものです。これはかなり荒い近似なので、いずれもっと精度を上げた経験式と比較してみます。
本来なら一番発電量が多くなるはずの夏場にかけて、梅雨空のせいで見事に大損していることがわかります。
この手のデータを初めて見る人は、「こんなに発電しないのか!?」と思われるでしょう。でも、我が家の2013年年間発電電力量実績 6707 kWhに対して、日照データと工学的な経験式から推定される2013年の総発電量は 6262 kWhです(こちらのサイトを使わせて頂きました)。つまり、これでもこの地域の水準より発電しているほうなのです。

緑と赤の階段状の線は、それぞれ発電と消費の1ヶ月平均電力量です。
いかに冬場に消費電力量が大きいかがわかりますね。
この差の第1の原因は冷暖房です。どちらもヒートポンプによるのですが、夏は外気温最高35℃のときに室温は27℃くらいですから、温度差は最大8℃。それに対して、冬は下手をすると外気温-5℃くらいまで下がります(このあたりは、気候的に東北地方南部太平洋岸相当なのです!)から、室温を20℃に保つとして温度差は25℃もあります。この温度差で熱を逆流させるのですから、大変です。
もう一つの原因は温水器です。これもヒートポンプですが、外気温マイナスのところで水を45℃近くにまで暖めるわけですから、熱を運ぶために要する仕事はさらに大きくなります。
おかげで、12月~2月は大赤字になるわけです。
一方、一番黒字になるのが5月です。これは西日本ならたいていこうなるようです。
日射量が大きいにもかかわらず、梅雨もなく、台風や夕立も来ないからです。さらにもう一つ、気温が高すぎないこともプラスになります。
一般的な半導体では、温度上昇とともにバンドギャップが小さくなります。そんなの大したことないだろうと思われるかもしれませんが、結晶シリコンの場合、25℃に対して70℃では約2割も出力低下します。我が家のパネルは、結晶系ではなく薄膜シリコン系タンデムなので(残念ながら「有機」ではありません ^^)、元々バンドギャップが広いためにこの低下が少なめになります。さらに、「夏場のアニール効果」で効率が回復する現象が拮抗するため、あまり目立ちません。

さて、この収支を改善するには、暖房と給湯の効率をいかに上げるかです。
快適かつ現代的(というより未来志向)な生活を犠牲にしないことが前提ですから、冷暖房をケチるつもりはありません。
まず、ターゲットは給湯です。娘と家内には、冬場に頭を洗う日を間引けと言っているのですが....
今年の冬は、こっそり給湯温度を下げてみましょうか。